OpenAIが開発中と噂されてきた初のハードウェア製品について、8月6日にBloombergの新しい報道が出て輪郭がかなりはっきりしてきました。ホッケーパックくらいのサイズで、画面のないドーナツ型のスマートスピーカーになるとのことです。ちょうどAppleがOpenAIを企業秘密の不正利用で訴えている真っ最中でもあるので、今回はこれまでの経緯も含めて一度まとめておきます。
今わかっていること
MacRumorsとAppleInsiderが8月6日、Bloombergのマーク・ガーマン氏の報道を引用する形でOpenAIの新しいハードウェアの詳細を伝えています。ハード面の特徴はだいたいこんな感じです。
- 画面なしのスマートスピーカー。ホッケーパック大、ドーナツのような形状
- AppleInsiderは第2世代Echo Dotと近いサイズだと表現している
- 価格は300〜400ドル程度になる見込み
- バッテリー駆動で、部屋から部屋へ持ち運んで使うことを想定
- ユーザーへの応答を示すために自動で動く部品(moving parts)がついていて、「生きている感じ」を出す狙いがあるらしい
- スピーカーグリルとマイクで音声チャット、カメラとセンサーでユーザーの周囲の情報も拾う
- 素材は高級感のある金属を使うとされる
発売時期については報道によって微妙に温度差があります。MacRumorsは「年内の発表を経て2027年の発売を目指している」と書いている一方、AppleInsiderは「発売時期ははっきりしない」とだけ伝えていて、明言を避けています。
デザインを手がけているのは元Appleのデザイン責任者ジョニー・アイブ氏で、彼が設立したLoveFromとの共同開発だとAppleInsiderは書いています。OpenAIは昨年アイブ氏のハード系スタートアップ「io」を65億ドル(6.5 billionドル)で買収しており、元Appleのハードチームのメンバーも複数OpenAIに加わっているそうです。
この報道が出るタイミングも実は結構きわどくて、AppleはOpenAIと元Apple社員2名を、企業秘密の不正利用(trade secrets)を理由に提訴しています。Appleの訴状では、金属の仕上げ技術についてAppleのものと似た手法をOpenAIがApple関連のサプライヤーに開発させた、という主張がされているとMacRumorsは伝えています。AppleInsiderによれば、OpenAI社内でApple由来の知的財産を使っていないか調査を行ったとのことですが、訴訟からまだ4週間しか経っていないタイミングでの結論は「Samsungとの意匠権をめぐる裁判で数か月かかった前例からすると、ずいぶん早い」と皮肉交じりに指摘しています。
OpenAI自身は「Appleのものとはまったく違う、新しいものを作っている」とコメントしており、Bloombergもこの携帯型スピーカーについて「Appleが出そうとしているものとは違う」と評しているとMacRumorsは伝えています。
これまでの経緯
Fortuneの7月15日の記事によれば、OpenAIのサム・アルトマンCEOがアイブ氏と組んでAIファーストのデバイスを作ると発表したのが「約1年前」。その後OpenAIはアイブ氏のio社を買収し、共同でハードウェア開発を進めてきました。今年1月には、OpenAIのチーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーであるクリス・レヘイン氏が「今年後半にお披露目する予定」と語っていたとFortuneは伝えています。
7月15日時点でのBloombergの報道では、デバイスは「画面のないスマートスピーカーで、AI時代の新しいホームコンピューターのような存在」と説明されていました。家電の操作やメディア再生、メッセージへの返信、ChatGPTを使った質問応答をこなし、ユーザーのメールなど個人情報を取り込みながらどんどんパーソナライズされていく、という内容です。
その直後、Appleが企業秘密の不正利用でOpenAIと元社員2名を提訴。そして8月6日、MacRumorsとAppleInsiderが今回のより具体的なサイズ・価格・素材の情報を報じた、という流れです。
海外の反応
Hacker Newsでも今回の報道はスレッドが立っていて、期待より懐疑的なコメントの方が目立ちました。
「Echoの賢い版ってこと? それとも、AIを『友達』だと思い込ませるための心理的な仕掛けなのか」(ユーザーallears)
「画面なしから始めるのは、それが正しいフォームファクターだからなのか、それとも単に画面付きより出荷しやすいからなのか気になる」(ユーザーelo2000)
「他のスマートスピーカーがどう使われて、どういう結果になったか見てるんだろうか。Spotify連携はしてほしい、AIが作ったあの微妙な音楽を聴くために(笑)」(ユーザーverdverm、皮肉混じり)
「AI企業がこぞって自分でハードを出し始めてるのは、AI単体のビジネスだけじゃ持続できないってことをはっきり示してる気がする」(ユーザーvrighter)
「画面なしでどうフィードバックを出すか、アイブみたいな人たちはその難題に取り憑かれてるけど、普通の人はそんなこと気にしてないと思う。HumaneもRabbitも、多少はAlexaも同じ問題を抱えてた」(ユーザーname99)
リーク元についても疑いの目を向けるコメントがありました。「OpenAIが訴訟から目をそらすためにガーマン氏にリークして、ガーマン氏もまんまとそれに乗っかってる」(ユーザーFalco McGregor)という指摘もあり、この報道自体がOpenAI側の広報戦略なのでは、という見方も出ています。
ケイの一言
正直、こういう「画面なしで持ち歩けるAIスピーカー」って聞くたびにHumaneのAI Pinを思い出してしまうんですよね。あっちは結局、動作が遅くて熱暴走の問題もあって、HPに買収された後にサービス終了してますし。OpenAIのはジョニー・アイブが絡んでるぶん質感とか動くパーツの演出には期待できそうですけど、300〜400ドルってお値段でどこまで「AIアシスタントとして日常的に使う理由」を作れるかは別問題な気がします。あとAppleとの訴訟中にこのタイミングでリーク情報が出てくるあたり、HNのコメントにもあった通り広報的な意図を感じなくもないので、ここは続報待ちですね。