Devinは「AI software engineer」を名乗る、Cognition社のエージェント型開発ツールです。名前だけ聞くと大げさな感じもしますが、公式サイトに載っているNubank(ブラジルの銀行)の事例では、数字が具体的に出ていて興味深いんですよね。今回はこの導入事例と公式のpricingページ、それとHacker Newsでの反応を突き合わせて紹介します。個人開発者よりは、大規模なリファクタリングやコード移行を抱えるエンジニア組織向けのツールという印象です。
Devinとは?何ができるのか
公式サイトのトップに大きく載っているのが、Nubankの導入事例です。Nubankは8年間使ってきた600万行超のETLモノリスを、サブモジュールに分割する移行プロジェクトを2023〜2024年にかけて進めていました。依存関係の連鎖が最大70段にもなる巨大な仕組みで、当初は1,000人以上のエンジニアが約10万件のデータクラス実装を、18ヶ月かけて手作業で移行する計画だったそうです。
そこにDevinを投入したところ、エンジニアリング時間ベースで8〜12倍の効率化、コストベースで20倍以上の削減という結果が出た、と公式は謳っています。さらにNubankの過去の移行事例をDevinのファインチューニングに使ったところ、タスク完了スコアが2倍、速度が4倍になり、1サブタスクあたり約40分かかっていた作業が10分に短縮されたとのこと。Devinが移行作業中に自分自身のためのスクリプト(データクラスのファイルパスからbr/co/mxの国拡張子を判定する処理など)を作って、単純作業を自動化していったという話も載っています。DataやCollections、Riskといった事業部門は、この移行を数ヶ月〜数年ではなく数週間で完了させた、とされています。
Nubankのシニアプロダクトマネージャー、Jose Carlos Castro氏のコメントも引用されていて、「エンジニアが複数ファイルにまたがる移行タスクを100%自分でやる代わりに、Devinの変更をレビューして微調整し、PRをマージするだけで済むようになった」という趣旨のことを言っています。
用途としては、このETL移行のような大規模リファクタリング・マイグレーションのほかに、PRレビュー&ビジュアルQA(ブラウザやデスクトップ操作を使ったバグの検出・修正、コード差分の整理)、レガシーコードベースのドキュメントやシステム図の自動生成が挙げられています。最近「Security Swarm」という新機能も追加されたようですが、公式サイトには名前が出ているだけで詳細の記載はありませんでした。
料金プラン
個人向けとチーム向けでプランが分かれています。ドルの金額はそのまま載せます。
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 少なめのクォータでエージェントを利用可能。利用できるモデルは限定的。インラインの編集とTab補完は無制限 |
| Pro | $20/month | Freeの内容に加え、OpenAI・Claude・Geminiのフロンティアモデルを含む全モデルにアクセス可能。SWE 1.7とオープンソースモデルは無料。クラウド上で動くDevin Cloudも利用可能。超過分はAPI料金で追加購入 |
| Max | $200/month(NEW) | Proの内容に加え、大幅に高いクォータ |
| Teams | $80/month+フルシート1人あたり$40/month | Proの内容に加え、メンバー数無制限、共有・共同作業、一括請求、分析付き管理ダッシュボード、優先サポート |
| Enterprise | 要問い合わせ | Teamsの内容に加え、最優先サポート、専任アカウント担当、SAML/OIDC SSO、管理者向けの一元管理、専用デプロイオプション |
同時セッション数の上限はFree/Proが10まで、Max/Teamsは無制限とのこと。連携先はSlackとTeams、LinearとJira、GitHub・GitLab・Bitbucketが基本プランから使えて、カスタムのgitプロバイダ対応はEnterprise限定です。FAQには「クォータを長持ちさせるコツ」として、プロンプトを簡潔にすること、日常的なタスクにはHaikuやGPT 5.2 Mini、Kimi K2.5のような軽量モデルに切り替えることが挙げられていました。メッセージ1件あたりのコストは使うモデルやタスクの規模、必要な推論量で変わる、とも書かれています。
海外での評判
Hacker Newsには、Devin発表時のスレッド(530ポイント・553コメント)を筆頭に、かなりの数のコメントが集まっています。ただ好意的な反応ばかりではなく、むしろ懐疑的な声が目立つ印象でした。
ある投稿者(mattlondon)は「これでエンジニアがもっと面白い問題に集中できるようになる、なんてことにはならない。むしろ経営者が高給取りのエンジニアの75〜90%を解雇して、残った人にAIへのプロンプト入力と後始末をさせるだけだ」と、雇用への強い懸念を書いていました。
Upwordの案件をDevinがこなすデモ動画については、「クライアントの依頼内容がUpwork案件としては妙に具体的すぎて、AIエージェント用にわざわざ用意されたテスト案件っぽく見える」(Bjorkbat)、「実際にはEC2への構築手順を聞かれていただけで、デモで見せていた内容とは違う」(the_newest)といった、デモの信憑性を疑う声もありました。実際、後日「Debunking Devin: “First AI Software Engineer” Upwork Lie Exposed」というタイトルのスレッド(302ポイント)も立っていて、この件は尾を引いたようです。
ベンチマークの数字を見た投稿者(pjmorris)は「実世界の評価では13.8%の課題しか解決できていない」と、公式が出したグラフを冷静に指摘していました。
一方で好意的というか複雑な反応もあって、steve_adams_86は「デモは印象的だけど範囲が狭くて限定的に見える。ソフトウェアアーキテクチャの設計まではできるのか」としつつ、「それでもこの結果は2年前なら魔法に見えただろう」とも書いていました。ThalesXのように「自分でもAIにコードを書かせようと何度も試したが、コンテキスト長やモデルの出力の質の問題で全然うまくいかない。期待外れが続いて正直うんざりしている」と率直な不満を書いている人もいます。
「first(世界初)」を名乗ったこと自体への批判(hiddencost)もあって、誇大な打ち出し方への反発は結構根強かったんだなというのが、スレッド全体を読んだ印象です。ちなみにCognitionは後にWindsurfを買収したという話題(502ポイントのスレッド)もHacker Newsで盛り上がっていましたが、コメント内容までは今回のソースには含まれていませんでした。
日本語対応と日本からの使い勝手
公式サイトやpricingページを見た限り、日本語対応についての記載は見当たりません。UIやサポートが日本語に対応しているかどうかは、ソース上では確認できませんでした。
登録して始めるまで
公式サイトにはFreeプランの「Download」ボタン、Pro/Max/Teamsそれぞれに「Select plan」ボタン、Enterpriseには「Contact us」ボタンが用意されています。個人でまず試すならFreeをダウンロードして、必要になったらPro以上にアップグレードする流れになりそうです。連携できるのはSlack・Teams、Linear・Jira、GitHub・GitLab・Bitbucketで、これは基本プランから使えるようです。それ以上の具体的なセットアップ手順は、今回のソースには載っていませんでした。
まとめ:向いてる人・向いてない人
Nubankの事例だけ見ると、数百人〜数千人規模のエンジニア組織が抱える「誰もやりたがらない大量の反復的な移行作業」を丸ごと渡す、という使い方では相当な効果が出ているようです。逆に、Hacker Newsの反応を見る限り、個人開発者が期待して試したら思ったほどうまくいかなかった、という声も無視できない量ありました。ベンチマークで13.8%という数字も出ていましたし、デモの信憑性を巡る騒動もあった以上、「宣伝文句通りに何でもこなす万能エージェント」だと思って手を出すと、たぶんがっかりすると思います。大規模な移行プロジェクトを任せられる体制がある会社と、とりあえずFreeプランで自分のコードに試してみたい個人とでは、期待値をだいぶ変えておいた方がいいツールだと感じました。